カナダの先住民族とは?歴史や問題点を解説

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カナダの先住民族とは?歴史や問題点を解説

更新日:2023/11/14

カナダの先住民族とは

多くの移民により構成されているカナダは世界有数の多民族国家として知られていますが、先住民は古くから国内で独自の地位を築いています。カナダの憲法では北米インディアンのファースト・ネーションズをはじめ、先住民とヨーロッパ人の両方を祖先とするメティス、北極地方に居住するイヌイットによる3つのグループがカナダの先住民族として認定されています。先住民として認定された市民はカナダ連邦法により一定の権利や社会保障などを受けることができます。多くの先住民は国内に3,100か所以上ある居留地と呼ばれる特定地域に居住していますが、大半の居留地は地方の辺鄙な場所にあるため不自由な生活を強いられているケースもあります。
このページではカナダの先住民に関する歴史や、地域や環境を取り巻く現在の状況について解説します。

カナダの先住民

カナダにおける多くの先住民はファースト・ネーションズ(First Nations)もしくはネイティブ(Natives)と呼ばれます。全先住民の60%以上がファースト・ネーションズであり、カナダ市民にとって最も身近な民族として認知されています。カナダにおける先住民は以下の3つのグループに分類されます。

  • ファースト・ネーションズ(First Nations:北米インディアンを祖先とする民族)
  • メティス(Métis:カナダ先住民とヨーロッパ人の両方を祖先とする民族)
  • イヌイット(Inuit:北極地方に居住する民族)

カナダ政府が2011年に行った統計によると先住民の総人口は約140万人で内訳は以下の通りです。

  • ファースト・ネーションズ 約85万人(60.8%)
  • メティス 約45万人(32.3%)
  • イヌイット 約6万人(4.2%)
  • その他(複数の民族登録など) 約4万人(2.7%)

先住民の人口はカナダ国内における人口の4.3%に該当し、居留地と呼ばれる特定地域に居住しています。
最も多くの先住民が居住している地域はオンタリオ州で約30万人、次いでブリティッシュコロンビア州が約23万人となります。

ファースト・ネーションズについて

ファースト・ネーションズの起源であるインディアンの歴史は遠い太古の時代にさかのぼります。北米の先住民族であるインディアンは今から1万年以上前にシベリアからベーリング海を渡り居住地を構えました。インディアンは北米社会において重要な地位にあり、独自の文化を築いたことで知られています。“インディアン”の呼び名はイタリア出身のクリストファー・コロンブスが1492年にアメリカ大陸を発見した際にインドと勘違いしたことに由来。先住民をインディアンと呼んだことが起源とされています。
周囲の環境や動物と深く関わり、自然を敬うインディアン独自の信仰は部族の長老たちにより口伝で代々伝えられてきました。先住民であるインディアンは敬意をこめてファースト・ネーションズと呼ばれるようになり、現在も独立した民族文化を継承しています。

ファースト・ネーションズの多くはオンタリオ州やブリティッシュコロンビア州に居住し、主に2つのグループに分かれています。1つは政府公認のファースト・ネーションズで、1876年に施行されたインディアン法が適用されます。政府公認のグループは一定の権利や社会保障が認められ、ファースト・ネーションズのために用意された居留地に定住することができます。同グループの市民には政府より“Status Card”と呼ばれるIDカードが発行されます。買い物をする際はIDカードを提示することで消費税が免除されるだけでなく、様々な税金や学費が控除されるなど優遇措置が設けられています。

もう一方のグループは政府非公認のファースト・ネーションズで、前述したインディアン法は適用外となります。政府非公認のグループには自身の意思でID登録をしない方だけでなく、出生証明書などの必要書類が揃わないために公認として認められない方など様々なケースがあります。政府の公認基準については曖昧な点が指摘され、差別の温床になっているとの意見もあることからカナダでは常に議論の対象となっています。
カナダ国内における全ファースト・ネーションズの人口は約85万人で、政府公認のグループが約64万人、政府非公認のグループが約21万人となっています。
ファースト・ネーションズのための居留地はカナダ国内に3,100か所以上あり、約600のコミュニティが存在します。独自の言語を使用しているコミュニティは50あまりで、居留地外で暮らすファースト・ネーションズも多く見受けられます。

イヌイットについて

イヌイット(Inuit)とは、カナダ北部の氷雪地帯で生活を営む人々を指します。元来エスキモーと呼称されてきましたが、1970年代に入り人種差別の廃止や民族保護の観点からイヌクティトゥト語で「人々」を意味する「イヌイット」が用いられています。過去にエスキモーと呼ばれたなかには主に以下の民族文化があります。

  • ユピート:ロシアのチュコト半島沿岸地域に居住する民族
  • イヌピアート:アラスカ北西部に居住する民族(中西部から南西部ではユピートと呼称)
  • イヌイット:グリーンランドに居住する民族(西部ではイヌイット、東部ではイットと呼称)

アラスカではイヌピアートとユピートを総称して「アラスカ・エスキモー」と呼ばれる場合があります。また、グリーンランドに居住するイヌイットはグリーンランド市民を指す「カラーリット」と総称されるケースもあります。
カナダにおけるイヌイットの人口は約6万人を数え、総数の約1/4にあたるイヌイットが居住しています。
古くは内陸系の狩猟民族がルーツとされており、沿岸でのコミュニティを築くため次第に北極地域へ移動。極寒の沿岸地域に適応する生活術を進化させ、長年にわたり独自の文化を築いてきました。現在は大陸北部沿岸や北極諸島に点在する約40の小集落で生活の基盤を構築しています。アザラシやセイウチなどの狩猟を得意とし、厳しい環境のなか高カロリーのタンパク質を備蓄するなど様々な生活の知恵が見られます。
カナダのイヌイットは外部とほとんど接触することなく生活してきましたが、1950年代にカナダ政府による定住政策に同意。医療や教育、社会福祉サービスが提供され、これまで季節ごとに移動していたイヌイットの人々はカナダに定住するようになりました。1970年頃には土地請求権の確立をめざす動きが始まり、1993年にカナダ政府と締結。政府との合意により1999年に旧ノースウェスト準州が分割され、イヌイットによる地域「ヌナブト準州」が誕生しました。ヌナブトとはイヌクティトゥト語で「私たちの土地」を意味し、州内における人口の約85%がイヌイットの人々で占めています。
全イヌイット民族のなかでカナダは世界的に重要な地位にあります。グリーンランド、アラスカ、ロシアのイヌイットと協同し、北極の重要問題に対処する国際機関「イヌイット北極圏会議」を組織し様々な活動を展開しています。

メティスについて

メティスはインディアンを祖先とするファースト・ネーションズとヨーロッパ人との間に誕生した混血民族を指します。メティス(Métis)という単語はフランス語に由来。スペイン語の“mestizo” やラテン語の“mixtu”を起源とする説もありますが、いずれも「混血」という意味を表します。
メティスのルーツは17世紀中期に遡り、古くはメティフランス語またはミチフ語と呼ばれる独自の混合言語を主流とし現在でも一部のコミュニティで使用されています。現在は主に英語による会話が中心で、第二言語としてフランス語を使用。メティス独自の混合言語による会話は、一部の年配市民で見受けられます。メティスはカナダ国内の様々な地域に居住し、ブリティッシュコロンビア州、アルバータ州、サスカチュワン州、マニトバ州、オンタリオ州、ケベック州、ノースウエスト準州にコミュニティを設立。2011年の国勢調査では約45万人のメティスが居住し、カナダ全人口の約2%を占めています。アメリカのモンタナ州、ノースダコタ州、ミネソタ州北西部にもコミュニティがあり、北米の先住民として独自の文化を形成しています。

カナダ各地方の先住民族

カナダには総人口の4.3%を占める約140万人の先住民族が暮らしています。先住民族はファースト・ネーションズ(北米インディアン)、メティス(先住民とヨーロッパ人の間に生まれた子孫)、イヌイット(カナダ北部に住む先住民族)の3つに分類されます。古くから北米に拠点を構え、植民地化や隔離政策などの歴史を背景に、独自の文化を継承してきました。ここではカナダの各地方で暮らす先住民族の歴史や文化施設を紹介します。

バンクーバー

バンクーバーがあるブリティッシュコロンビア州の南西地域には、かつて“マスキーム族”や“スコーミッシュ族”など多くの先住民族が暮らしていました。しかし、18世紀に入ると欧州諸国による入植が盛んに行われます。一帯の植民地化を進めるイギリスに対し、“マスキーム族”ら先住民族は正式な条約を締結できず土地の所有権を失った歴史があります。現在は、バンクーバーから北に伸びる入り江”インディアン・アーム”のほか、沿岸に広がるセイヌスカウユム州立公園を“ツレイル・ウォウトゥス族”とブリティッシュコロンビア州が共同で管理しています。バンクーバーのランドマークである“スタンレー公園”では、先住民族による散策ツアーが観光客に人気です。

エドモントン

アルバータ州エドモントンにはカナダ総人口の2%に相当する先住民族が暮らします。都市別における先住民族が占める居住者数は国内第2位で、市内には先住民族の歴史を体感できる施設が数多くあります。フォート・エドモントン公園には先住民族の歴史を展示するカナダ最大級の野外博物館があり、ファースト・ネーションズメティスの伝統的な暮らしを紹介しています。また、18,000点もの先住民族に関する資料が収蔵されている“ロイヤル・アルバータ博物館”では、州の歴史と先住民族との深い関わりについて学ぶことができます。

カナディアンロッキー

カナディアンロッキーには紀元前1万年頃から先住民族が定住していたと言われています。現在でも、雄大な自然の中で催行されるツアーやアクティビティを通じて、先住民族の暮らしや文化を体験することができます。カナディアンロッキーの麓にあるカルガリーでは、先住民族が運営するツアー会社“ペインテッド・ウォーリアーズ”のアトラクションが人気です。野生動物の追跡や狩り体験、荒野でのグランピングなど様々なアウトドアプログラムから先住民族の暮らしを感じることができるでしょう。先住民族が製作する民芸品に興味がある方は、“トレーディングポスト”がおすすめです。100年近く交易所として栄えた歴史があり、店内には伝統的なモカシンや様々なネイティブクラフトが数多く陳列されています。

ウィニペグ

マニトバ州は先住民族の文化が色濃く残る地域で、ウィニペグは特に先住民の人口が多い街として有名です。ファースト・ネーションズの歴史や文化を伝えるアトラクションやツアーが多数あり、街の至る所に先住民族アーティストによるインスタレーションが展示されています。北極地方で暮らす先住民族イヌイットの芸術や文化について学びたい方は、ウィニペグ美術館カウマジュク・アートセンターを訪れてみましょう。“カウマジュク・アートセンター”は先住民族による芸術作品が数多く展示され、イヌイットの博物館としては世界最大規模を誇ります。

トロント

約70,000人の先住民族が暮らすトロントには、ネイティブへの敬意を込めた美術館・博物館が多数あります。先住民族をテーマとするフェスティバルも盛んに行われ、“メディア・アーツ・フェスティバル”は世界最大規模のチャリティイベントとして有名です。先住民族アーティストによる作品や映画を通し、ネイティブの文化を身近に感じることができるでしょう。ネイティブの文化に触れてみたい方は、トロントに拠点を置く企業3社のパートナーシップによるアプリ“Whose Land”の利用がお勧めです。スマートフォンを利用し先住民族に関する様々な歴史や文化を学ぶことができます。

モントリオール

ケベック州モントリオール近郊にある先住民族“モホーク族”の居留地カナワクは、他の先住民族居留区と共に“イロコイ連邦”を建立したことで知られます。モントリオールのマッコード博物館には16,000点以上の考古学的資料が収蔵され、当時の様子について詳しく知ることができます。また、ラウンドハウスカフェは先住民族により運営され、売り上げの一部が先住民族のホームレスへの支援に充てられます。毎年8月には世界の先住民族を讃える“モントリオール先住民族フェスティバル”が開催され、コンサートやアートショーのほか、ネイティブの作る雑貨や名物料理の屋台が並びます。

ケープブレトン島

カナダ東部大西洋岸にあるケープブレトン島では、先住民族“ミクマク族”が13,000年以上にわたり独自の文化を継承しています。メンバートウ・ヘリテージ公園では“ミクマク族”に関する展示やプログラムを通し、当時の暮らしや文化について学ぶことができます。“ミクマク族”の文化をさらに知りたい方は、エスカソニ・カルチュラル・ジャーニーズを訪ねてみましょう。ゴート島散策のほか、伝統的な食事や先住民族のお守り“ドリームキャッチャー”作りなど様々なプログラムが体験できます。“ミクマク族”のガイドによるストーリーテリングでは、文化発祥や古代からの教訓など伝承神話が人気を集めています。

先住民の同化政策

先住民の同化政策は、カナダの小学生が歴史の授業で必ず学ぶ重要な項目です。
カナダにおける同化政策は1874年に遡ります。当時、カナダに居住する先住民の子供たちは約15万人におよび、教会が運営する“residential school” (寄宿学校)へ強制的に入学させられました。カナダ政府は先住民を教育するのは自分たちの任務であるとし、先住民の子ども達に独自の言語による会話やコミュニケーションを禁止すると表明。会話や言語は英語のみとなり、キリスト教の信仰を強要しました。当時は132の寄宿学校が所在し、大人からの暴力や虐待が数多くあったとの証言が発端になり社会問題に発展。1990年代には多くの教会が先住民に謝罪し、2008年には当時の首相であるスティーブン・ハーパー氏が正式に謝罪。過去の同化政策において先住民を深く傷つけたことを認め、大きな人種差別問題として取り上げられました。
同化政策の発端は、「先住民族の文化や信仰は劣っていて適切ではない」という現代至上主義が基盤にあると複数の専門家は指摘。長年にわたり築かれた独自の文化や言語がこれ以上失われることがないよう、カナダの教育機関では民族の多様化について多くのことを学ぶカリキュラムが用意されています。

先住民の社会問題

先住民が抱える社会問題は数多くあり、対策や解決方法をめぐり様々な議論が続いています。
先住民が抱える大きな課題として深刻な貧困が挙げられ、収入の低さや失業率の高さがカナダ全体の社会問題となっています。貧困により生活が圧迫されることで犯罪に及ぶ傾向は上昇します。先住民の貧困は雇用問題と直結しているため、政府は職業訓練のあっせんや生活向上のための支援に力を入れています。また、他にも以下の内容が先住民の社会問題として取り上げられています。

  • アルコールやドラッグ中毒
  • 高い喫煙率による健康被害
  • 居留地の劣悪な住宅事情
  • 教育水準の低さ、低学歴の人々が占める割合
  • 自殺率の高さ
  • 子どもに対する保障や教育環境の整備

先住民の自殺率は一般のカナダ市民と比べ5~7倍も高く、特にイヌイットの若者による自殺率は非常に高い傾向にあります。イヌイットの人々は喫煙率が高く、アルコール中毒や薬物依存などに陥るケースも増加しています。背景には極端な寒さと日照時間の少なさが関係していると見られ、環境による要因も大きいと専門家は指摘。また、ファースト・ネーションズが住む居留地の住環境にも問題があるとし、各自治体は電気・ガス・水道などインフラの整備が行き渡らない地域に対して支援を行っています。
伝統や独自の文化を重んじる先住民は古くから伝わる習慣により、生活するうえで様々なルールや制約があります。先住民が培ってきた文化や習慣に理解を示すとともに、時代に沿った環境づくりに取り組むことが求められています。

カナダへ渡航する方はeTA(イータ)の申請が必要です

観光旅行や短期のビジネスを目的としてカナダへ渡航する際は、日本を出発する前にeTA(イータ)を申請する必要があります。eTA(イータ)はカナダ政府および移民局が定める電子渡航認証制度で、オンラインによる申請が必須となります。eTA(イータ)は一度の取得で5年間有効となり、有効期間内であれば複数回のカナダ渡航が可能です。
eTA(イータ)を利用して渡航する際はカナダで最長6か月の滞在が認められます。ただし、6か月以内の滞在であっても留学や就労を目的としてカナダへ渡航する方はeTA(イータ)申請の対象外となります。留学や就労を目的とする方は、カナダビザセンターにてビザの取得をご検討ください。
ビザの取得に関する詳細は「カナダビザ申請センター・カナダ大使館について」をご確認ください。

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